通勤途中の事故やケガがすべて「通勤災害(労災)」になるわけではありません。
実務では、本人も会社も「通勤だから労災ですよね?」と思い込み、結果として申請や社内対応が混乱するケースが少なくありません。
本記事では、“通勤災害で実務上“間違いやすい事例”を中心に、押さえておきたい判断ポイントをわかりやすく整理します。
目次
通勤災害とは?基本の考え方
通勤災害は、ざっくり言うと
就業に関して、住居と就業場所の間を合理的な経路・方法で移動している最中の災害
が対象になります。
ポイントは次の3つです。
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住居⇔就業場所の移動であること
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合理的な経路・方法であること
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「逸脱」や「中断」がないこと(または例外として認められること)
実務で間違いやすい!通勤災害の判断ポイント
①「少しの寄り道」でも通勤災害は外れる?
よくある誤解が「寄り道したら全部アウト」です。
確かに原則として、通勤途中に
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寄り道(逸脱)
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立ち止まって私用を済ませる(中断)
があると通勤災害の対象外になりやすくなります。
ただし例外として、“日用品の購入など“日常生活上必要な行為”については、一定の範囲で認められるケースがあります。
✅例:対象になる可能性がある寄り道
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生活必需品の購入
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病院・薬局(緊急性のある受診等)
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保育園への送迎(状況次第)
❌対象外になりやすい寄り道
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趣味の買い物
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長時間の飲食
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友人との待ち合わせ
つまり、「寄り道の内容」と「必要性」が判断の分かれ目になります。
②通勤途中の飲酒・飲食・寄り道はほぼアウト?
特に多いのが「飲食」系です。
例えば、
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仕事帰りに同僚と飲みに行く
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その帰りに転んでケガをした
こういったケースは、通勤とは別の私的行為が入るため、通勤災害から外れる可能性が高いです。
「短時間だから大丈夫」と思われがちですが、飲酒が入ると通勤性が切れやすいので要注意です。
③「いつもの道」じゃないとダメ?別ルートは?
通勤経路は必ずしも「いつも同じ」である必要はありません。
ただし、遠回りや寄り道が含まれる場合、合理性が争点になります。
✅認められやすい例
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交通渋滞回避
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鉄道遅延による迂回
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通勤手段の変更(電車→バスなど)
❌認められにくい例
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明らかな遠回り
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観光・娯楽目的
④在宅勤務(テレワーク)は通勤災害じゃない?
テレワークが増えたことで、
「家で転んだ。これって労災?」
という相談も増えています。
在宅勤務では「通勤」そのものが発生しないため、通勤災害ではなく業務災害として検討されます。
例えば、業務中に業務に関連する行為でケガをした場合は労災対象となる可能性があります(ただし私事の混入があると判断は難しくなります)。
【番外編】出張中の事故はどうなる?(社長が驚く労災認定事例)
ここで、通勤災害とは別枠ですが、実務で意外と混乱するのが「出張中の事故」です。
一般的に出張中は、移動・宿泊・食事などが業務と密接に関連しているため、状況によっては労災(業務災害)となります。
✅労災認定された事例(日本)
出張先の宿泊施設で飲酒 → 階段から転落し死亡 → 労災認定
「え?お酒を飲んで転んだのに?」と思う方も多いのですが、出張中は
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宿泊が業務上必要
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宿泊施設での生活行為(食事・入浴等)は出張に通常伴う行為
と整理され、ケースによっては業務上災害と評価されることがあります。
この事例は、通勤災害ではなく業務災害の枠ですが、
「会社の管理がどこまで及ぶのか」を考えるうえで、とても示唆に富んでいます。
会社がやるべき実務対応(ここが重要)
通勤災害・業務災害の判断は、労基署の最終判断となります。
会社として大切なのは
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起きた事実を正確に記録する
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会社側の憶測で「労災じゃない」と決めつけない
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本人から経路や行動のヒアリングを行う
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必要書類の案内・社内手続きの整備
です。
特に「寄り道」や「飲酒」などが絡む場合、後から話が変わったり、説明が曖昧になることがあります。
そのため、時系列で整理したヒアリングシートを用意しておくと、実務が一気にスムーズになります。
まとめ|通勤災害は“思い込み”が一番危ない
通勤災害は、
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どこまでが通勤か
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寄り道はどこまで許されるか
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逸脱・中断があるか
など、判断ポイントが多く、実務で間違いやすい領域です。
「たぶん労災」「きっと労災じゃない」と決めつけず、
迷う場合は早めに専門家へ相談することをおすすめします。